Windowsシステムの基本操作ガイド
【概要】AI開発、プログラミング、データベース管理などを行う上で、Windowsの基本的なファイル操作やコマンドライン操作は不可欠な基礎スキルである。本稿では、Windows 11が提供するウィンドウ管理、ファイル操作、コマンドラインインターフェース、テキスト編集といった基本的な機能について、基本的な操作方法から応用的な設定まで、実践的な使用方法を解説する。
【目次】
- ウィンドウの基本操作
- フォルダ、パス、エクスプローラーによるファイル操作と基本設定
- 環境変数とユーザープロファイル
- コマンドプロンプトの基本
- メモ帳(テキストエディタ)
- Windows日本語環境における「\」と「¥」の解説
- ソフトウェアインストールの基本
- トラブルシューティング
【サイト内のWindowsセットアップ関連ページ】
- Windows 11インストールガイド: 別ページ »で説明
- Windows システムの基本操作ガイド: 別ページ »で説明
- Windows 11の基本設定、おすすめソフトウェア: 別ページ »で説明
- Windows のまとめ: 別ページ »で説明
- Windows上のLinux開発環境構築ガイド:WSL 2とUbuntuのインストール・設定・運用: 別ページ »で説明
- Windows の種々のソフトウェアのインストール: 別ページ »で説明
【外部リソース】
- Windows 11のディスクイメージのダウンロードのページ: https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows11
- Rufusのページ: https://rufus.ie/ja/
1. ウィンドウの基本操作
Windowsにおけるウィンドウ操作は、作業効率を向上させる基本的なスキルである。ウィンドウのサイズ変更、移動、最大化・最小化といった操作により、複数のアプリケーションを効率的に配置できる。
ウィンドウサイズの変更
ウィンドウの端または角をドラッグすることで、画面レイアウトを調整できる。マウスカーソルが両方向矢印に変化した時点で、サイズ調整が可能である。
ウィンドウの移動
タイトルバーをドラッグすることで、画面上の任意の位置へ配置できる。
ウィンドウの最大化と最小化
タイトルバー右上の制御ボタンにより、画面表示を切り替えられる。
2. フォルダ、パス、エクスプローラーによるファイル操作と基本設定
2.1 ファイルとフォルダ
フォルダ(ディレクトリ)は、複数のファイルやサブフォルダを格納する容器である。これにより、大量のファイルを階層的に整理して格納できる。
2.2 パス
パスとは、コンピューター上でファイルやフォルダの位置を示す文字列である。例えば、「C:\Users\(ユーザー名)\Documents\研究\データ.xlsx」は、Cドライブから始まる階層構造の中で、ファイル「データ.xlsx」の位置を示している。
2.3 エクスプローラーによるファイル・フォルダ操作の基本
エクスプローラーの起動方法
- Windows + E キーで起動する
- タスクバーのエクスプローラーアイコンをクリックする
ファイルとフォルダの基本操作
- コピー操作:Ctrl + C キー、または右クリックメニューから「コピー」を選択する
- 切り取り操作:Ctrl + X キー、または右クリックメニューから「切り取り」を選択する
- 貼り付け操作:Ctrl + V キー、または右クリックメニューから「貼り付け」を選択する
- 名前の変更:F2 キーの押下、または右クリックメニューから「名前の変更」を選択する
- 削除操作:
- ごみ箱への移動:Delete キーを押下する
- 完全削除:Shift + Delete キー(警告:データ復元不可)
2.4 Windowsエクスプローラーでの隠しファイルとファイル名拡張子の表示設定
この設定を行うことで、通常は表示されないシステムファイルや設定ファイル(.gitフォルダ、.env設定ファイルなど)を確認できる。プログラミングやシステム設定作業において必要となる設定である。
設定方法1:グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を使用する方法
- エクスプローラーを起動する(Windows + E キー)
- 上部メニューから「表示」タブを選択する
- 「表示/非表示」グループにて以下の項目を有効化する
- 「ファイル名拡張子」にチェックを入れる
- 「隠し項目」にチェックを入れる
設定方法2:コマンドを使用する方法
注意:以下のコマンドはレジストリを直接変更する。
powershell -command "Set-ItemProperty -Path 'HKCU:\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\Advanced' -Name 'Hidden' -Value 1"
powershell -command "Set-ItemProperty -Path 'HKCU:\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\Advanced' -Name 'ShowSuperHidden' -Value 1"
powershell -command "Set-ItemProperty -Path 'HKCU:\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\Advanced' -Name 'HideFileExt' -Value 0"
3. 環境変数とユーザープロファイル
3.1 環境変数
環境変数とは、設定値を格納した変数であり、システム全体で共有される設定値を保存できる。環境変数 %USERPROFILE% には現在のユーザーのプロファイルディレクトリ名が格納されている。コマンドプロンプトなどで「%USERPROFILE%\Desktop」と記述することで、そのユーザーのデスクトップフォルダを参照できる。
3.2 ユーザープロファイル
ユーザープロファイルとは、Windowsの各ユーザーアカウントに対して個別に割り当てられる専用ディレクトリである。ユーザープロファイルにはユーザー固有のデータと設定が格納される。
- Windows 10/11ではユーザープロファイルは、C:\Users\ユーザー名 に配置される
- コマンドプロンプトの起動直後は、作業ディレクトリがユーザープロファイルに設定される
4. コマンドプロンプトの基本
コマンドプロンプトはコマンドでシステムを操作するツールである。システム管理、ファイル操作、設定変更、インストール作業などの様々な作業をコマンドで実行でき、GUIでは手順が多くなる操作や、自動化したい操作の実行に使用される。
4.1 コマンドプロンプト
コマンドプロンプトは、キーボードから文字コマンドを入力してコンピューターを操作するツールである。文字コマンドによる操作は、CLI(Command Line Interface)とも呼ばれる。
4.2 一般ユーザーと管理者
一般ユーザー権限では自分のプロファイル内操作が可能であり、管理者権限ではシステム全体を制御できる。
一般ユーザー権限
一般ユーザー権限は、日常的な作業に必要な基本的な操作権限である。自分のユーザープロファイル内でのファイル操作、インストール済みアプリケーションの実行などが可能である。
管理者権限
管理者権限は、システム全体を制御できる最高レベルの権限である。一般ユーザー権限では C:\Windows\System32 などのシステムディレクトリへのファイル作成や、システム設定の変更ができないが、管理者権限では可能である。
4.3 コマンドプロンプトの起動
コマンドプロンプトの起動(通常起動)
「cmd」は、コマンドプロンプトを起動するためのプログラム名である。
- 方法①: Windowsキーまたはスタートメニューで「cmd」と入力し、「コマンドプロンプト」を選んでEnterを押す
- 方法②: Windows キー + R で「cmd」と入力し、Enterを押す
- 方法③: スタートボタンを右クリックして「ターミナル」を選択する
実行例
以下の手順で、環境変数 %USERPROFILE% の値が表示される。
- コマンドプロンプトを起動する
- 次のコマンドを実行する
echo %USERPROFILE%
コマンドプロンプトを管理者として実行
システム設定やソフトウェアのインストールなど、システムレベルの変更が必要な操作をコマンドプロンプトで実行する際は、Windowsのコマンドプロンプトを管理者権限で起動する必要がある。
- 方法①: Windowsキーまたはスタートメニューで「cmd」と入力し、「コマンドプロンプト」を右クリックし、「管理者として実行」を選択する
- 方法②: Windows キー + R で「cmd」と入力し、Ctrl + Shift + Enter キーを押す
- 方法③: スタートボタンを右クリックして「ターミナル(管理者)」を選択する
- 方法④: PowerShellで、次のコマンドにより起動することも可能である:
powershell start-process cmd.exe -verb runas
4.4 コマンド実行のパラメータ(オプション)
パラメータやオプションにより、コマンドに条件や設定を追加できる。「dir /a」コマンドにおいて、dirは「ディレクトリ内容の表示」という指示であり、/aは「隠しファイルも含めて全て表示する」という追加条件である。
4.5 ワイルドカード
コマンド実行では、ワイルドカードを用いて、複数のファイルを一度に指定できる。「*.tmp」は「拡張子が.tmpであるすべてのファイル」を意味し、テスト.tmp、12345.tmp などのファイル名とマッチする。
4.6 コマンドプロンプトによるファイル操作
コマンド入力後、Enterキーで実行が開始される。プロンプトには現在の作業ディレクトリのパスが表示され、現在作業しているフォルダをカレントディレクトリと呼ぶ。
基本的なファイル操作コマンド
- dir: ディレクトリの内容を表示するコマンド
dir:現在のディレクトリ内容を表示するdir /a:隠しファイルとシステムファイルを含む全ファイルを表示する
- cd: カレントディレクトリを確認、移動するコマンド
cd ディレクトリパス:カレントディレクトリを変更するcd ..:一つ上の階層のディレクトリに移動するcd(引数なし):現在のカレントディレクトリを表示する
- mkdir: 新規ディレクトリを作成するコマンド
- rmdir: ディレクトリを削除するコマンド
- del: 指定したファイルを削除するコマンド
del ファイル名:ファイルを完全削除する(ごみ箱には移動されない)
- type: テキストファイルの内容を表示する
- copy: ファイルの複製を作成する
- move: ファイルまたはフォルダの名称変更や移動を行う
実行例
- コマンドプロンプトを起動する
- 次のコマンドを実行する
dir
cd ..
mkdir test_folder
notepad
5. メモ帳(テキストエディタ)
メモ帳は、設定ファイル(.config、.iniなど)の編集や、プログラムコードの断片を一時的に書き留めておく際に使用される、Windows 標準のテキストエディタである。
5.1 メモ帳の基本機能
- 起動:スタートメニューの検索機能で「notepad」と入力して実行する
- 文書作成:メモ帳の編集領域を選択し、キーボードで文字入力を行う
- ファイル保存:Ctrl + S キーまたは「ファイル」メニューから「保存」を選択する
5.2 コマンドプロンプトの活用例:メモ帳でファイル作成
Windowsコマンドプロンプトでは、「notepad」コマンドにより、ファイル作成が可能である。以下の例では、最初にカレントディレクトリをユーザープロファイルへ移動し、その後メモ帳を使用して新規ファイルを作成・編集する。
cd %USERPROFILE%
notepad hello.txt
コマンドプロンプトの通常起動では、セキュリティ保護のため、システム領域(C:\Windows、C:\Program Files など)へのファイル作成が制限される場合がある。これらのディレクトリでファイル操作を行うには、コマンドプロンプトを管理者権限で起動する必要がある。
6. Windows日本語環境における「\」と「¥」の解説
基本概念
Windows日本語環境では、バックスラッシュ(\)と円記号(¥)は同一の文字コード(ASCII 0x5C、Unicode U+005C)として処理される。表示方法は使用するフォントやアプリケーションによって異なるが、システム内部では同じ文字として扱われる。
この特性は、ファイルパス指定において重要である。「C:\Users\名前\Documents」というパスは、日本語環境のコマンドプロンプトでは「C:¥Users¥名前¥Documents」として表示される。両者は同一の場所を指すパス表現である。
キーボード別の動作
日本語キーボードの場合
「¥」キーを押下すると、以下のように動作する。
- テキストエディタでは環境やフォントに応じて「\」または「¥」として表示される
- コマンドプロンプトでは通常「¥」として表示される
- システム内部では常にバックスラッシュとして処理される
英語キーボードの場合
「\」キーを押下すると、日本語キーボードと同様に動作する。
使用場面での注意点
教科書やオンライン教材で「\」が使用されている場合でも、日本語キーボードでは「¥」キーで入力することで正常に動作する。
Pythonなどのプログラミング言語でパス文字列を扱う場合、バックスラッシュはエスケープ文字として機能することがあるため注意が必要である。パス指定においてスラッシュ(/)を使用することで、エスケープ処理を考慮せず、クロスプラットフォームで動作するパス指定が可能になる。
path = "C:/Users/徳川家康/Documents" # スラッシュを使用する例
path_raw = r"C:\Users\徳川家康\Documents" # Raw文字列を使用する例 (Python)
path_escape = "C:\\Users\\徳川家康\\Documents" # バックスラッシュをエスケープする例 (Python)
7. ソフトウェアインストールの基本
7.1 インストールの基本
インストールとは、ソフトウェアをコンピューターで実行可能な状態にするための処理である。プログラムファイルの配置、システムへの登録、設定などの処理が含まれる。
7.2 インストールスコープ
インストールスコープは、ソフトウェアインストール時の対象ユーザーの範囲の指定である。Windows Package Manager(winget)では、「--scope machine オプション」を指定してPythonをインストールすると、そのコンピューターのすべてのユーザーがPythonを使用できる。このオプションを指定しない場合、インストールを実行したユーザーのみがPythonを使用可能となる。
8. トラブルシューティング
コマンドプロンプトやファイルの移動・削除で発生するトラブルとその対処方法について解説する。
コマンドプロンプトで「アクセスが拒否されました」というエラーが発生した場合
操作に必要な権限がない可能性がある。コマンドプロンプトを「管理者として実行」で起動し直す。
ファイルの削除・移動が実行できない状況
- 対象ファイルが他のプログラムで使用中の可能性がある。関連するプログラムを終了してから再度実行する
- 問題が解決しない場合は、システムを再起動する
コピー・貼り付け機能が正常に動作しない場合
- クリップボードに問題がある可能性がある。Windows + V キーでクリップボード履歴を表示し、内容を確認するか、PCを再起動する