Ubuntu システムの基本操作ガイド
【概要】本稿では、Ubuntuシステムにおける基本的な操作方法を解説する。主な内容として、GNOMEデスクトップ環境でのウィンドウ操作、ターミナルを使ったLinuxコマンド(ls
, cat
, mv
, rm
など)の実行、標準テキストエディタでの文書作成・編集、そして基本的なファイル操作を取り上げる。加えて、システム管理の第一歩として、パッケージ更新やプロセス管理を通じた簡単なトラブルシューティング方法にも触れる。これらの操作は、Ubuntuを効率的に活用し、今後のプログラミングやサーバー管理といった学習を進める上での重要な基礎である。
【目次】
ウィンドウマネージャ
基本操作
Super
キー(多くのキーボードではWindowsロゴキー)を押すとアクティビティ概要が表示され、起動中のアプリケーション一覧、検索バー、ワークスペースが表示される。ここからアプリケーションを検索して起動するのが基本的な方法である。- ウィンドウサイズの変更:ウィンドウの角をドラッグしてサイズを変更する。カーソルが矢印の形に変わったらドラッグを開始する。
- ウィンドウの移動:タイトルバーやウィンドウ枠をドラッグして移動する。
- ウィンドウの表示:重なったウィンドウは、タイトルバーをクリックすることで最前面に表示できる。
ターミナル
ターミナルは、キーボードからコマンド(命令)を入力してコンピューターを操作するためのテキストベースのインターフェースである。Linuxシステムにおいて非常に重要なツールである。
使用方法
- 起動方法:
- アクティビティメニューから「ターミナル」を検索する。
- ショートカットキー
Ctrl+Alt+T
を使用する。
- 基本操作:コマンドを入力し
Enter
キーを押すと実行される。コマンド入力待ちを示すプロンプト(通常はユーザー名@ホスト名:~$
のような形式で、末尾が$
記号)が表示された後に入力する。
管理者権限でのコマンド実行 (sudo
)
- パッケージのインストールやシステム設定の変更など、管理者権限が必要な操作を行う際は、コマンドの前に
sudo
を付ける(例:sudo apt update
)。実行時に自身のパスワード入力を求められる(入力中、画面には何も表示されないが、入力は受け付けられている)。
テキストエディタ
Ubuntu 24.04 LTSでは、標準のテキストエディタとして「テキストエディタ」 (GNOME Text Editor) が搭載されている(以前のgeditから変更された)。設定ファイルの編集、簡単なメモ、短いプログラムコードの記述などに利用できる。
基本機能
- 起動:アクティビティメニューから「テキストエディタ」を検索して起動する。
- テキスト入力:通常のテキストエディタと同様に入力できる。
- カーソル移動:矢印キーまたはマウスで移動する。
- ファイル保存:
Ctrl+S
またはメニューから「保存」を選択する。 - 別名保存:メニューから「名前を付けて保存」を選択する。
- 日本語入力:IBus入力システムを使用し、
Super+Space
キーで入力方式を切り替える。 - ファイルの閉じ方:ウィンドウ右上の「×」ボタン、または
Ctrl+Q
を押す。
ファイル操作
基本的なコマンド
- 現在地の確認 (
pwd
コマンド)pwd
: 現在作業しているディレクトリのフルパス(絶対パス)を表示する。
- ディレクトリ移動 (
cd
コマンド)cd <ディレクトリ名>
: 指定したディレクトリに移動する。cd ..
: 一つ上の階層(親ディレクトリ)に移動する。cd ~
またはcd
: 自身のホームディレクトリに移動する。
- ディレクトリ作成 (
mkdir
コマンド)mkdir <ディレクトリ名>
: 新しいディレクトリを作成する。
- ファイル一覧 (
ls
コマンド)ls
:基本的なファイル・ディレクトリ名の一覧を表示する。ls -l
:詳細情報(パーミッション、所有者、サイズ、更新日時など)を表示する。ls -a
:隠しファイル(ドット.
で始まるファイル)も含めて表示する。ls -la
:隠しファイルを含む全てのファイルとディレクトリを詳細情報付きで表示する。
- ファイルの表示
cat <ファイル名>
:ファイル内容を標準出力に一括表示する(短いファイルの内容確認に適している)。less <ファイル名>
:ファイル内容をページ単位で閲覧する(大きなファイルに適しており、スペース
で次ページ、b
で前ページ、q
で終了する)。
- ファイルのコピー (
cp
コマンド)cp <コピー元ファイル> <コピー先ファイル>
: ファイルを指定した名前でコピーする。cp <コピー元ファイル> <コピー先ディレクトリ>/
: ファイルを指定したディレクトリに同じ名前でコピーする。cp -r <コピー元ディレクトリ> <コピー先ディレクトリ>/
: ディレクトリを中身ごと再帰的にコピーする(-r
オプションが必要である)。
- ファイルの移動・名前変更 (
mv
コマンド)- 基本構文:
mv [オプション] <元のパス> <新しいパス>
- 名前変更:
mv <旧ファイル名> <新ファイル名>
(同じディレクトリ内で新しい名前を指定) - 移動:
mv <ファイル名またはディレクトリ名> <移動先ディレクトリ>/
- オプション例:
-i
上書きが発生する場合、実行前に確認メッセージを表示する。
- 基本構文:
- ファイルの削除 (
rm
コマンド)rm <ファイル名>
:ファイルを削除する。rm -i <ファイル名>
:削除前に確認メッセージを表示する。rm -r <ディレクトリ名>
:指定したディレクトリとその中身を再帰的に全て削除する。 この操作は極めて危険であり、**元に戻せない。** システムに必要なファイルや重要なデータを誤って削除しないよう、実行するパスをpwd
でよく確認し、最大限の注意が必要である。
トラブルシューティング
よく発生する可能性のある問題とその解決策を紹介する。
- ソフトウェアインストールの失敗
- 原因:インターネット接続の問題、パッケージの依存関係の矛盾、リポジトリへの接続不良、パッケージリストの不整合、ディスク容量不足などが考えられる。
- 解決策:
- まずインターネット接続を確認する。
sudo apt clean
: ダウンロード済みのパッケージファイル(.deb)を削除し、キャッシュをクリアする。sudo apt update
: 利用可能なパッケージのリストを最新の状態に更新する。sudo apt install -f
: 壊れた依存関係があれば、その修正を試みる。df -h
コマンドでディスクの空き容量を確認する。容量不足も原因となりえる。- 再度インストールを試みる (
sudo apt install <パッケージ名>
)。
- ディスプレイ設定の問題
- システム設定(歯車アイコン)から「ディスプレイ」を開き、適切な解像度を手動で設定する。
- システム動作の遅さ
- 1.
top
またはhtop
(htop
はtop
より高機能で視覚的に把握しやすいが、sudo apt install htop
での別途インストールが必要な場合がある)コマンドを実行し、CPUやメモリを過剰に消費しているプロセスを特定する。 - 2. 不要であると判断したプロセスのプロセスID(PID)を確認する。
- 3.
kill
コマンドでプロセスに終了要求 (SIGTERM, 15) を送り、安全な終了(データ保存など)を試みる。 - 4. プロセスが応答しない場合は、
kill -9
で強制終了 (SIGKILL, 9) を行う。プロセスは即座に停止するが、保存されていないデータが失われるリスクがある。最終手段として、影響を理解し慎重に使用する。 - 注意: 役割が不明なプロセスやシステム上重要なプロセスをむやみに終了させると、システムが不安定になる、または再起動が必要になる可能性がある。終了させる前に、プロセスの役割を調べてみることを推奨する。
- 1.