Ubuntu 初期設定ガイド: インストール直後の主要設定項目

概要
本ガイドは、Ubuntu(例: 24.04 LTS)をクリーンインストールした後、開発や研究用途で安定かつ効率的に利用するための基本的な環境構築手順を解説するものである。セキュリティを向上させ、日本語環境を最適化し、運用効率を高めることを目的とした16のステップ(ファイアウォール設定、システム更新の自動化に関する情報、基本的なSSHセキュリティ設定、ログ確認方法を含む)を、コマンドライン操作を中心に具体的に示す。各設定項目について、その目的と効果、具体的なコマンドライン操作手順、および注意点を明確に解説する。特に日本語環境の整備と使いやすさの向上、そして基本的なセキュリティ確保に重点を置くものである。

目次

  1. 基本システム設定
    1. ダウンロード元(ミラーサーバー)を日本に設定
    2. aptの設定
    3. システムの更新(自動更新についても言及)
    4. タイムゾーンとロケールの設定
    5. NTP時刻同期の設定(systemd-timesyncd)
  2. セキュリティ設定
    1. ファイアウォール(ufw)の設定
    2. OpenSSHサーバーの設定(基本的なセキュリティ強化)
  3. 日本語環境
    1. 日本語環境の整備
    2. 日本語入力の設定(IBus + Mozc推奨)
    3. ユーザディレクトリの英語表示への変更
  4. カスタマイズとユーティリティ
    1. 運用保守用ツールのインストール
    2. 基本的なログ確認(journalctl)
    3. 電源管理の最適化
    4. Caps Lockキーの無効化(またはCtrl化)
  5. クリーンアップ
    1. 不要ソフトウェアの削除
    2. 不要ファイルの除去(安易に実行しないこと)

【サイト内のUbuntuセットアップ関連ページ】

【外部リソース】

1. ダウンロード元(ミラーサーバー)を日本に設定

目的と背景

Ubuntuのパッケージダウンロード元サーバーを、地理的に近い日本国内のミラーサーバーに変更する。これにより、インターネット負荷の軽減に貢献するとともに、パッケージのダウンロード速度の向上が期待できる。

実行コマンド

以下のコマンドは、sedコマンドを用いて/etc/apt/sources.listファイル内のサーバーアドレスを示す文字列を、日本のミラーサーバーのアドレス(jp.archive.ubuntu.com)に直接置換する操作である。

sudo sed -i 's/\/\/archive.ubuntu.com/\/\/jp.archive.ubuntu.com/g' /etc/apt/sources.list
sudo sed -i 's/\/\/us.archive.ubuntu.com/\/\/jp.archive.ubuntu.com/g' /etc/apt/sources.list
sudo sed -i 's/\/\/fr.archive.ubuntu.com/\/\/jp.archive.ubuntu.com/g' /etc/apt/sources.list
sudo apt update

解説と注意点

sudo apt updateコマンドで、変更したダウンロード元サーバーから最新のパッケージリスト情報を取得する。

なお、Ubuntu 24.04 LTSなど新しいバージョンでは、一部のリポジトリ設定が/etc/apt/sources.list.d/ディレクトリ内の.sourcesファイル(deb822形式)で管理される場合がある。このコマンドは主に/etc/apt/sources.listファイルを対象としており、多くの基本的なリポジトリに対して有効である。

ミラーサーバー変更後のapt update実行例

2. aptの設定

目的と背景

パッケージ管理システムaptがHTTPSプロトコルで提供されるリポジトリを安全に利用できるように、関連する基本的なパッケージがインストールされていることを確認する。

実行コマンド

# HTTPSリポジトリ利用に必要な基本的なパッケージをインストール
sudo apt update
sudo apt install ca-certificates curl gnupg lsb-release

解説と注意点

apt関連パッケージインストール例

3. システムの更新(自動更新についても言及)

目的と背景

インストールされている全てのパッケージを最新の状態に更新する。これにより、セキュリティ脆弱性の修正やバグ修正が適用され、システムの安定性と安全性が向上する。定期的な更新は非常に重要である。

実行コマンド(手動更新)

# 1. パッケージリストの情報を更新
sudo apt update

# 2. インストール済みのパッケージを包括的に更新(依存関係の変更も考慮)
sudo apt full-upgrade

# 3. 不要になったパッケージを自動的に削除
sudo apt autoremove

# 4. 古いバージョンのダウンロード済みパッケージキャッシュを削除
sudo apt autoclean

# 5. システムを再起動(カーネル更新等があった場合に推奨)
sudo shutdown -r now

解説と注意点(手動更新)

注意: full-upgradeはシステムに大きな変更を加える可能性がある。重要なシステムでは、実行前にバックアップを取得することを強く推奨する。

自動更新機能(unattended-upgrades)について

apt update実行例
apt full-upgrade実行例
apt autoremove実行例
apt autoclean実行例

4. タイムゾーンとロケールの設定

目的と背景

システムのタイムゾーンを日本標準時(Asia/Tokyo)に、ロケール(言語や地域に関する設定)を日本語UTF-8(ja_JP.UTF-8)に設定する。これにより、システムクロックの時刻表示や、アプリケーションのインターフェース言語などが適切に表示されるようになる。

実行コマンド

# タイムゾーンを日本標準時に設定
sudo timedatectl set-timezone Asia/Tokyo

# /etc/locale.genファイル内の日本語ロケールのコメントを解除(行頭の#を削除して有効化)
sudo sed -i 's/^# \(ja_JP.UTF-8 UTF-8\)/\1/' /etc/locale.gen

# ロケール定義ファイルを生成
sudo locale-gen

# システム全体のデフォルトロケールを設定(/etc/default/localeファイルに反映)
sudo update-locale LANG=ja_JP.UTF-8 LC_ALL=ja_JP.UTF-8 LANGUAGE="ja:en"

# ロケール設定を再構成(通常はupdate-localeで反映されるため不要な場合が多い)
# sudo dpkg-reconfigure -f noninteractive locales

解説と注意点

まずtimedatectlコマンドでタイムゾーンを設定する。次に、/etc/locale.genファイルを編集(sedコマンドで該当行の先頭の#を削除)して日本語UTF-8ロケールを有効化し、locale-genコマンドでシステムが利用可能なロケール定義を生成する。最後にupdate-localeコマンドで、システム全体のデフォルトロケール設定(/etc/default/localeファイルに書き込まれる)を行う。LANGUAGE="ja:en"は、アプリケーションが日本語リソースを持たない場合に英語をフォールバックとして使用するための設定である。

端末でexport LANG=ja_JP.UTF-8のようにコマンドを実行すると、その端末セッションでのみ一時的に環境変数が設定される。システム全体への永続的な設定は、上記の手順(特にupdate-locale)で行う必要がある。設定後、再ログインまたは再起動で反映される。

timedatectl実行例
locale-gen実行例
update-locale実行後の確認例

5. NTP時刻同期の設定(systemd-timesyncd)

目的と背景

システムの時刻をネットワーク上の正確な時刻サーバー(NTPサーバー)と同期させ、常に正確な時刻を維持する。これは、ログファイルのタイムスタンプの整合性維持や、スケジュールされたタスクの正確な実行、セキュリティプロトコル(例: TLS/SSL証明書の有効期限)の正常な動作などに不可欠である。

近年のUbuntu(24.04 LTSを含む)では、標準でsystemd-timesyncdという軽量なサービスがこの役割を担っている。ここでは、その設定を確認し、有効化されていることを確認する。

実行コマンド(確認と設定)

# timedatectlコマンドで現在の時刻同期状態を確認
timedatectl status

# NTP同期が有効(active)でない場合は有効化する(通常はデフォルトで有効)
# sudo timedatectl set-ntp true

# (オプション)同期するNTPサーバーを確認・変更する場合
# 設定ファイルを開く(例: nanoエディタを使用)
# sudo nano /etc/systemd/timesyncd.conf
# [Time]セクションの`NTP=`行でサーバーを指定できる(例: NTP=ntp.nict.jp pool.ntp.org)
# 設定変更後はsystemd-timesyncdサービスを再起動
# sudo systemctl restart systemd-timesyncd.service

解説と注意点

6. ファイアウォール(ufw)の設定

目的と背景

インターネットに接続する環境では、外部からの不正なアクセスを防ぎ、システムを保護するために、ファイアウォールを設定し、許可された通信のみを受け入れるようにする。Ubuntuでは標準でufw(Uncomplicated Firewall)という使いやすいファイアウォール管理ツールが利用できる。これは基本的なセキュリティ対策として不可欠である。

実行コマンド

# ufwをインストール(通常はデフォルトでインストール済み)
sudo apt update
sudo apt install ufw

# SSH接続を許可(ポート22/tcp) - リモートSSH接続を利用する場合、有効化の前に実行必須
sudo ufw allow ssh
# または sudo ufw allow 22/tcp

# ufwを有効化(実行すると即座に有効になる)
# 【重要】SSH接続中に実行する場合は、必ず事前に上記allow sshを実行すること
sudo ufw enable

# (オプション)デフォルトポリシーを明示的に設定する場合(通常はenable時に適用される)
# sudo ufw default deny incoming  # 外部から内部への接続をデフォルトで拒否
# sudo ufw default allow outgoing # 内部から外部への接続をデフォルトで許可

# (オプション)他に必要なサービスがあればポートを開放(例: WebサーバーのHTTP/HTTPS)
# sudo ufw allow http  # ポート80
# sudo ufw allow https # ポート443
# sudo ufw allow 80/tcp # ポート番号とプロトコル指定

# 現在の設定状況と有効状態、ルール番号付きで確認
sudo ufw status numbered

解説と注意点

7. OpenSSHサーバーの設定(基本的なセキュリティ強化)

目的と背景

他のコンピュータから、ネットワーク経由で安全にこのUbuntuシステムへ接続し、コマンドライン操作を行うために、OpenSSHサーバーソフトウェアをインストールし、基本的なセキュリティ設定を行う。

実行コマンド(インストール)

sudo apt update
sudo apt install openssh-server

実行コマンド(基本的なセキュリティ設定)

ブルートフォース攻撃などのリスクを低減するため、SSHの待ち受けポート番号を変更し、rootユーザーによる直接ログインを禁止することを推奨する。

# 1. 設定ファイルを開く(例: nanoエディタを使用)
sudo nano /etc/ssh/sshd_config

# 2. 設定を変更(ファイル内で該当箇所を探して修正)
#   - ポート番号を変更(例: 22番から10022番へ。1024番以上のウェルノウンポートでない番号を推奨)
#     変更前: #Port 22
#     変更後: Port 10022
#   - rootユーザーでのログインを禁止
#     変更前: #PermitRootLogin prohibit-password  または PermitRootLogin yes など
#     変更後: PermitRootLogin no

# 3. 設定ファイルを保存して閉じる(nanoの場合: Ctrl+O, Enter, Ctrl+X)

# 4. SSHサービスを再起動して設定を反映
sudo systemctl restart sshd

# 5. 【重要】ファイアウォール(ufw)の設定を変更(ポート番号を変更した場合)
#    - 新しいポート番号を許可
sudo ufw allow 10022/tcp
#    - (オプション)元のポート番号(22)を閉じる(新しいポートで接続確認後)
# sudo ufw delete allow ssh
# sudo ufw delete allow 22/tcp

解説と注意点

より安全性を高めるためには、パスワード認証を無効にして公開鍵認証のみを許可する設定などが推奨されるが、これらの詳細設定は本ガイドの範囲外とする。必要に応じて別途セキュリティ設定を行うこと。

8. 日本語環境の整備

目的と背景

Ubuntuシステム上で日本語を正しく表示するために必要なフォントパッケージや、アプリケーションソフトウェアのメニューなどを日本語で表示するための翻訳データ(言語サポートパッケージ)をインストールする。

実行コマンド

sudo apt update
# 言語サポートパッケージを検出・インストールするためのツールをインストール
sudo apt install language-selector-common
# 現在のロケール設定(ja_JP.UTF-8)に必要な言語サポートパッケージを自動でインストール
sudo apt install $(check-language-support)

解説と注意点

check-language-supportコマンドは、現在のシステムの言語設定(このガイドの手順で日本語に設定済みの場合)に基づいて、推奨される関連パッケージ(日本語フォント、アプリケーションの日本語翻訳データなど)を自動的に検出し、そのパッケージ名のリストを出力する。$()構文により、そのリストがapt installコマンドに渡され、必要なパッケージが一括でインストールされる。

check-language-supportを使ったインストール例

9. 日本語入力の設定(IBus + Mozc推奨)

デスクトップ環境を利用する場合、日本語入力メソッドを設定する。Ubuntu 24.04 LTSでは、デフォルトのインプットメソッドフレームワークとしてIBusが採用されており、日本語入力エンジンMozc(Google日本語入力のオープンソース版)との組み合わせが推奨される。サーバー用途などコマンドラインインターフェース(CUI)のみの環境ではこの設定は不要である。

推奨: IBusとMozcの設定(Ubuntu 24.04デフォルト)

1. IBusとMozcのインストール

IBusフレームワークとMozcエンジンをインストールする(通常、日本語環境を選択してインストールした場合、既にインストールされていることが多い)。

sudo apt update
sudo apt install ibus ibus-mozc

2. 入力ソースの追加(GUI設定)

Ubuntuの「設定」アプリケーションを開き、以下の手順で入力ソースを追加する。

なお、GUIのメニュー構成はUbuntuのバージョンやフレーバーによって若干異なる場合がある。

3. 日本語入力のテスト

テキストエディタ(例: gedit)などを起動し、キーボードの半角/全角キー、またはSuper + スペースキー(デフォルトの切り替えキー。設定で変更可能)を押して、日本語入力モード(Mozc)に切り替わること、および日本語が正常に入力できることを確認する。

日本語入力テスト例

4. Mozc設定ツールの起動

Mozc自体の詳細な設定(キーバインドのカスタマイズ、辞書ツールの起動、変換候補の表示設定など)を変更したい場合は、以下のコマンドでMozc専用の設定ダイアログを開くか、IBusの設定メニューからMozcの設定を開く。

/usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog &

代替: Fcitx5とMozcを使用する場合

IBusの代わりにFcitx5フレームワークを使用したい場合は、以下の手順で設定できる。Ubuntu 24.04ではIBusがデフォルトで推奨されているが、Fcitx5の方が特定の環境(例: Waylandでの変換候補の表示問題)で有利な場合がある。

1. Fcitx5とMozcのインストール

Fcitx5本体、Mozcエンジン、Mozc関連ツールなどをインストールする。

sudo apt update
sudo apt install fcitx5 fcitx5-mozc mozc-utils-gui
Fcitx5とMozcのインストール例

2. 使用するインプットメソッドをFcitx5に設定(GUI設定)

Ubuntuの「設定」アプリを開き、「システム」→「地域と言語」メニューに進む。「言語サポート」ウィンドウが開く場合がある(指示に従いインストールする)。「キーボード入力に使うIMシステム」という項目で「Fcitx 5」を選択する。

3. 設定の反映(再起動または再ログイン)

ここまでの設定変更(特にIMシステムの変更)をシステムに完全に反映させるためには、一度ログアウトして再ログインするか、システム全体を再起動する必要がある。

sudo shutdown -r now
再起動コマンド実行例

4. Fcitx5へのMozcの追加と確認(GUI設定)

再ログイン後、画面上部または下部のパネルにキーボードアイコン(Fcitx5アイコン)が表示されることを確認する。アイコンをクリックし、「設定」を選択する。

「入力メソッド」タブが開かれるので、以下の手順でMozcを追加(または確認)する。

  1. 左下の「入力メソッドを追加」(+ボタンのようなアイコン)をクリックする。
  2. 表示されるウィンドウで「Mozc」を検索(またはリストから探す)し、選択して「追加」ボタンを押す。
  3. リストに「キーボード - 日本語」(または相当するレイアウト)と「Mozc」が表示されていることを確認する。不要な入力メソッドがあれば削除する。
  4. 設定ウィンドウを閉じる。

5. 日本語入力のテストとMozc設定

テキストエディタ等で半角/全角キーまたはCtrl + スペース(Fcitx5のデフォルト切り替えキーの一つ)でMozcに切り替わるかテストする。Mozc自体の設定は、パネルのFcitx5アイコンから「Mozc」→「設定ツール」を選択するか、以下のコマンドで起動できる。

/usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog &

10. ユーザディレクトリの英語表示への変更

目的と背景

Ubuntuを日本語環境でインストールすると、ホームディレクトリ内に「ダウンロード」や「ドキュメント」、「デスクトップ」といった標準ディレクトリが日本語名で作成される。これらのディレクトリ名を英語(「Downloads」、「Documents」、「Desktop」など)に変更する。これにより、コマンドライン(端末)操作時のパス入力補完が容易になり、また一部のプログラムやスクリプトとの互換性問題を防ぐことができる。

実行コマンド

# ディレクトリ名変更ツールを含むパッケージをインストール
sudo apt update
sudo apt install xdg-user-dirs-gtk
# コマンド実行時のロケールを一時的に英語(C)に設定して、ディレクトリ名更新コマンドを実行
LANG=C LC_ALL=C xdg-user-dirs-gtk-update

解説と注意点

コマンドの先頭にLANG=C LC_ALL=Cを付けることで、そのコマンド実行時のみ一時的にロケールを標準的な英語(Cロケール)に設定している。これにより、xdg-user-dirs-gtk-updateコマンドが英語の標準ディレクトリ名を生成するようになる。

上記のコマンドを実行すると、通常、以下のようなGUIダイアログが表示され、ディレクトリ名を変更するかどうか確認を求められる。

ユーザーディレクトリ名変更確認ダイアログ

表示されたダイアログで、「Don't ask me this again」(今後このダイアログを表示しない)のチェックボックスにチェックを入れ、「Update Names」(名前を更新)ボタンをクリックする。

ユーザーディレクトリ名変更後の確認例

この操作により、ホームディレクトリ直下にある設定ファイル~/.config/user-dirs.dirsの内容が更新され、各標準ディレクトリが指すパスが英語名に変更される。また、ファイルマネージャーのブックマーク(例: ~/.config/gtk-3.0/bookmarks)など、関連する設定も更新される場合がある。

例: ~/.config/user-dirs.dirsの更新後の内容

XDG_DESKTOP_DIR="$HOME/Desktop"
XDG_DOWNLOAD_DIR="$HOME/Downloads"
XDG_TEMPLATES_DIR="$HOME/Templates"
XDG_PUBLICSHARE_DIR="$HOME/Public"
XDG_DOCUMENTS_DIR="$HOME/Documents"
XDG_MUSIC_DIR="$HOME/Music"
XDG_PICTURES_DIR="$HOME/Pictures"
XDG_VIDEOS_DIR="$HOME/Videos"

11. 運用保守用ツールのインストール

目的と背景

システムの監視、ネットワーク設定の確認、ハードウェア情報の表示など、Ubuntuの運用や保守作業(トラブルシューティング等)に役立つ基本的なコマンドラインツールをインストールする。

実行コマンド

sudo apt update
# ifconfig、netstatなどを含むネットワークツール群(旧式だが有用な場合あり)
sudo apt install net-tools
# lspciコマンド(PCIデバイス情報表示)を提供
sudo apt install pciutils
# Pythonからシステム情報を取得するライブラリ(オプション)
# sudo apt install python3-psutil # Python3用の場合

解説と注意点

運用保守ツールインストール例

12. 基本的なログ確認(journalctl)

目的と背景

システム全体の動作記録(ログ)を確認する方法を知ることは、システムの健全性チェックや問題発生時のトラブルシューティングに不可欠である。Ubuntuではjournalctlコマンドを使用して、Systemdジャーナルに記録されたログを一元的に確認できる。

実行コマンド(ログ確認)

これは設定ではなく、ログを確認するためのコマンド操作例である。

# システム全体のログをリアルタイムで表示(新しいログが追記されるのを監視)
# Ctrl+Cで終了
sudo journalctl -f

# 今回の起動以降のログをすべて表示(逆順、古いログが上)
sudo journalctl -b

# 優先度が「エラー(error)」以上のログを表示
sudo journalctl -p err

# 優先度が「警告(warning)」以上のログを表示
# sudo journalctl -p warning

# 特定のサービス(ユニット)に関するログを表示(例: sshdサービス)
sudo journalctl -u sshd.service

# 特定の期間のログを表示
# 例: 昨日からのログ
# sudo journalctl --since "yesterday"
# 例: 特定の日時以降のログ
# sudo journalctl --since "2024-01-10 09:00:00"
# 例: 過去1時間以内のログ
# sudo journalctl --since "1 hour ago"

解説と注意点

13. 電源管理の最適化

目的と背景

デスクトップ環境における電源管理設定を変更し、一定時間操作がない場合に自動で画面が暗くなったり(ブランクスクリーン)、システムがスリープ状態(サスペンド)に入ったりする動作を抑制する。これは、サーバーとして常時稼働させる場合や、作業中に意図せずスリープさせたくないデスクトップPCなどに適した設定例である。ラップトップPCでバッテリー駆動時間を重視する場合は、これらの設定値を調整する必要がある。

設定変更には、デスクトップ環境に応じてgsettings(GNOME、MATEなど)またはxfconf-query(XFCE)といったコマンドラインツールを使用する。

GNOME/MATEデスクトップ環境向けの設定(Ubuntu標準など)

実行コマンド

# GNOME: アイドル時に画面をブランクにしない(遅延時間を0に設定 = 無効化)
gsettings set org.gnome.desktop.session idle-delay 0
# GNOME: AC電源接続時に自動でサスペンドしない('nothing' = 何もしない)
gsettings set org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-ac-type 'nothing'

# (オプション)GNOME: ロック画面機能を無効にする(セキュリティリスク増大のため通常非推奨)
# gsettings set org.gnome.desktop.lockdown disable-lock-screen true

# (オプション)MATE環境の場合: AC電源接続時に自動でサスペンドしない(遅延時間を0に設定 = 無効化)
# gsettings set org.mate.power-manager sleep-computer-ac 0

# (オプション)light-locker(一部環境で使用)の自動ロック無効化
# gsettings set apps.light-locker lock-after-screensaver 0
# gsettings set apps.light-locker lock-on-suspend false

解説と注意点

現在の全gsettings設定を確認する例:

gsettings list-recursively > /tmp/current_gsettings.txt

XFCEデスクトップ環境向けの設定(Xubuntuなど)

実行コマンド

# ディスプレイ電源管理(DPMS)を無効にする
xfconf-query -c xfce4-power-manager -p /xfce4-power-manager/dpms-enabled -s false
# AC電源接続時の自動サスペンドを無効にする(0 = 無効)
xfconf-query -c xfce4-power-manager -p /xfce4-power-manager/inactivity-sleep-mode-on-ac -s 0
# または、非アクティブ時の動作を「何もしない」に設定(値は環境による場合あり)
# xfconf-query -c xfce4-power-manager -p /xfce4-power-manager/inactivity-on-ac -s 0

解説と注意点

14. Caps Lockキーの無効化(またはCtrl化)

目的と背景

Caps Lockキーは、特にプログラミングなどアルファベット主体の入力作業中に誤って押してしまいやすく、意図しない大文字入力が発生する原因となる。ここでは、このキーの標準的な動作を変更し、誤操作を防ぐ。Caps Lockキーを完全に無効化するか、あるいは追加のCtrl(コントロール)キーとして機能させるかを選択できる。

実行コマンド

以下のいずれかの方法で、キーボード設定ファイル/etc/default/keyboard内のXKBOPTIONSにオプションを追加する。どちらか一方を選択して実行する。

注意: /etc/default/keyboardファイルに既にXKBOPTIONS="..."という行が存在する場合、既存の設定を消さずにオプションをカンマ(,)で区切って追記する必要がある(例: XKBOPTIONS="lv3:ralt_switch,ctrl:nocaps")。以下のecho ... | sudo tee -a ...コマンドは単純に行末に追加するため、意図せず設定が重複・破損する可能性がある。安全のため、sudo nano /etc/default/keyboard等のエディタでファイルを開き、XKBOPTIONSの行を直接編集することを推奨する。

# 【推奨: エディタで編集】sudo nano /etc/default/keyboardを開き、XKBOPTIONS="..."に追記または新規追加

# --- または、以下のコマンドで追記(既存設定に注意)---

# Caps Lockキーを追加のCtrlキーとして機能させる場合:
# echo 'XKBOPTIONS="ctrl:nocaps"' | sudo tee -a /etc/default/keyboard

# Caps Lockキーを完全に無効化する場合:
# echo 'XKBOPTIONS="caps:none"' | sudo tee -a /etc/default/keyboard

解説と注意点

15. 不要ソフトウェアの削除

目的と背景

Ubuntu Desktop版には、標準で様々なアプリケーション(例: ゲーム類、オフィススイート、メールクライアントなど)がプリインストールされている。サーバー用途で利用する場合や、これらの特定のアプリケーションを使用しない場合には、削除することでディスク容量の節約やシステムの軽量化につながる。

関連する外部ページ

https://smdn.jp/softwares/ubuntu/installation-lts-desktop(注: リンク先の情報は古くなっている可能性がある。参考程度に参照のこと)

実行コマンド

# 例: LibreOffice(オフィススイート)を削除する場合
sudo apt purge libreoffice*

# 例: Thunderbird(メールクライアント)を削除する場合
sudo apt purge thunderbird*

# 例: Rhythmbox(音楽プレイヤー)を削除する場合
# sudo apt purge rhythmbox*

# 例: GNOME Games(ゲーム集)を削除する場合
# sudo apt purge gnome-games* gnome-sudoku aisleriot gnome-mahjongg

# 上記で指定したパッケージと、それらに依存していて不要になったパッケージをまとめて削除
sudo apt autoremove

# 古いパッケージキャッシュファイルを削除
sudo apt autoclean

解説と注意点

削除するパッケージは、自身の利用環境と用途に合わせて慎重に選択する必要がある。purgeオプションは、パッケージ本体だけでなく、関連する設定ファイルも含めて完全に削除する。autoremoveコマンドは、他のパッケージから依存されなくなったパッケージを自動的に見つけて削除するため、個別にパッケージを削除した後で実行すると効果的である。

16. 不要ファイルの除去(安易に実行しないこと)

目的と背景

システム運用中に溜まった不要なファイル(例: パッケージ管理システムのキャッシュ、不要になった依存パッケージ、一時ファイル、古いコマンド履歴など)を削除し、ディスクスペースを整理・クリーンアップする。

実行コマンド

# apt autoremove: 不要になった依存パッケージを削除(比較的安全)
sudo apt autoremove
# apt autoclean: 古いバージョンのダウンロード済みパッケージキャッシュを削除(比較的安全)
sudo apt autoclean

# history -c: 現在開いているターミナルセッションのコマンド履歴のみを消去(一時的)
history -c

# rm -f ~/.bash_history: 保存されているコマンド履歴ファイル全体を削除(恒久的・任意)
# 注意: 過去のコマンド履歴が完全に不要な場合や、セキュリティ上の理由で残したくない場合にのみ実行すること
# rm -f ~/.bash_history

# BleachBit: システムクリーナーツールのインストール(任意・使用には最大限の注意が必要)
# sudo apt install bleachbit

# BleachBitによるシステムの不要ファイルの除去(任意・最大限の注意が必要)
# 警告: 使用法を誤るとシステムに深刻なダメージを与える可能性がある
# 【重要】実行前に必ず以下のコマンドで内容を確認すること
# sudo bleachbit --list         # 削除可能な項目リストを表示
# sudo bleachbit --preview all  # 実際に削除される全ファイルリストを表示(削除項目は慎重に選択)
#
# 上記で内容を完全に理解し、削除されるファイルの影響を把握した上で、自己責任で実行する場合のみ:
# 例: システムキャッシュのみ削除する場合(項目は--listで確認し、慎重に選択)
# sudo bleachbit --clean system.cache
# (注意: `system.*`や`all`を安易に指定しないこと)

解説と注意点