Ubuntu 24.04におけるEmacsでのMozc日本語入力設定 (Fcitx5利用)
Ubuntu 24.04 LTS環境において、テキストエディタEmacs上でMozcを用いた日本語入力を設定する手順を解説するものである。
前提条件:
- Ubuntu Desktop 24.04 LTS がインストール済みであること。
- Emacs (Ubuntu 24.04標準のEmacs 29.3等) がインストール済みであること。
- 基本的なコマンドライン操作に慣れていること。
- インターネット接続環境があること(パッケージインストールのため)。
本設定では、インプットメソッドフレームワークとしてFcitx5を利用する手順を示すものである。
1. Fcitx5と関連パッケージのインストール
まず、Fcitx5、Mozcエンジン、およびEmacsからMozcを利用するために必要なパッケージをインストールする。以下のコマンドを端末で実行する。
最初にパッケージリストを更新する。
sudo apt update
次に、Emacs用のMozcパッケージ、Fcitx5本体、Fcitx5用Mozcエンジン、Mozc関連ツールをインストールする。
sudo apt install emacs-mozc fcitx5 fcitx5-mozc mozc-utils-gui
emacs-mozc
: EmacsからMozcを利用するためのパッケージである。fcitx5
: インプットメソッドフレームワーク本体 (バージョン5) である。fcitx5-mozc
: Fcitx5上でMozcエンジンを利用するためのパッケージである。mozc-utils-gui
: Mozcの設定ツールや辞書ツールなどを含むパッケージである。
2. Fcitx5の設定
次に、Fcitx5をシステムで使用するインプットメソッドとして設定し、入力メソッドにMozcを追加する。
2.1. インプットメソッドシステムの設定
Ubuntuの「設定」アプリを開き、「システム」 > 「地域と言語」メニューに進む。「言語サポート」ウィンドウが開く場合がある(指示に従いインストールする)。「キーボード入力に使うIMシステム」という項目で「Fcitx 5」を選択する。設定後、システムへの反映のために一度ログアウトし、再ログインすることが強く推奨される。
2.2. Fcitx5へのMozcの追加
再ログイン後、画面上部または下部のパネルにキーボードアイコン(Fcitx5アイコン)が表示されることを確認する。アイコンをクリックし、「設定」を選択する。
「入力メソッド」タブが開かれるので、以下の手順でMozcを追加する。
- 左下の「入力メソッドを追加」(+ボタンのようなアイコン)をクリックする。
- 表示されるウィンドウで「Mozc」を検索(またはリストから探す)し、選択して「追加」ボタンを押す。
- (任意)リストに「キーボード - 日本語」のようなレイアウトと「Mozc」が表示されていることを確認する。不要な入力メソッドがあれば選択して「入力メソッドを削除」(-ボタンのようなアイコン)で削除する。
- 設定ウィンドウを閉じる。
通常、この時点で設定は反映されるが、もし反映されない場合はPCを再起動する。
3. Mozcの設定ツール
Mozcの詳細な設定(キー割り当て、辞書管理など)は、Fcitx5のメニューからアクセスできる設定ツールで行う。
パネルのFcitx5アイコンをクリックし、「入力メソッド」の中から「Mozc」にカーソルを合わせるか選択し、表示されるサブメニューから「設定ツール」を選択する。これにより /usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog
に相当する設定画面が起動する。
4. Emacsの設定 (init.el
)
EmacsでMozcを利用するための設定を、設定ファイル ~/.emacs.d/init.el
(または ~/.emacs
) に追記する。
4.1. 基本設定 (UTF-8環境)
現代的な環境ではUTF-8が標準であるため、通常はこちらの設定を使用する。
;; Mozcライブラリをロード
(require 'mozc)
;; デフォルトのインプットメソッドをMozcに設定
(setq default-input-method "japanese-mozc")
;; 日本語環境向けの設定 (不要な場合もある)
(set-language-environment "Japanese")
;; [全角/半角] キーで日本語入力の ON/OFF を切り替え
(global-set-key [zenkaku-hankaku] 'toggle-input-method)
;; デフォルトの文字コードを UTF-8 に設定
(prefer-coding-system 'utf-8)
;; Fcitx5環境向けのヘルパープログラム指定 (推奨)
(setq mozc-helper-program-name "fcitx5-mozc-helper")
4.2. Shift_JIS環境向け設定 (必要な場合のみ)
特定の理由でShift_JIS (CP932) をデフォルトとして使用する必要がある場合は、上記 (prefer-coding-system 'utf-8)
の代わりに以下の設定を記述する。基本設定の他の部分(`require`, `setq default-input-method`, `set-language-environment`, `global-set-key`, `setq mozc-helper-program-name`)は共通であるため、重複して記述する必要はない。
;; --- 基本設定 (上記 4.1 の prefer-coding-system 以外) はここに記述想定 ---
;; (require 'mozc)
;; (setq default-input-method "japanese-mozc")
;; (set-language-environment "Japanese")
;; (global-set-key [zenkaku-hankaku] 'toggle-input-method)
;; (setq mozc-helper-program-name "fcitx5-mozc-helper")
;; --- ここまで ---
;; デフォルトの文字コードを Shift_JIS (CP932) に設定
(prefer-coding-system 'shift_jis)
;; ファイル名の文字コードを CP932 に設定
(set-file-name-coding-system 'cp932)
;; キーボード入力の文字コードを CP932 に設定
(set-keyboard-coding-system 'cp932)
;; ターミナル出力の文字コードを CP932 に設定
(set-terminal-coding-system 'cp932)
4.3. 設定の反映
init.el
に設定を追記したら、ファイルを保存し、Emacsを再起動する。これにより設定が読み込まれ、有効になる。
5. 設定完了と動作確認
以上で、Emacs上でFcitx5とMozcを用いた日本語入力設定は完了である。Emacsを起動し、[全角/半角] キーを押して日本語入力モード(Mozc)に切り替わるか、また、実際に日本語が入力できるかを確認する。
入力モードの切り替えができない場合や、日本語入力ができない場合は、以下の点を確認する。
- Fcitx5がシステムのインプットメソッドとして正しく選択されているか(「設定」>「地域と言語」を確認。再ログインが必要な場合がある)。
- Fcitx5デーモンが起動しているか (端末で
ps aux | grep fcitx5
を実行して確認)。 - Fcitx5の設定でMozcが入力メソッドに追加されているか(パネルのアイコンから「設定」を開いて確認)。
init.el
の記述に誤りがないか、Emacsが正しく再起動されているか。
Fcitx5は、変換候補の表示位置や設定UIなどが改善されている。