3DDFA_V2による3次元顔復元実験 Colab プログラムによる実験・研究スキルの基礎
【概要】本記事では、3DDFA_V2フレームワークを用いた3次元顔モデル生成プログラムについて解説する。単一の顔画像から3次元形状を復元し、OBJ/PLY形式で出力する技術をGoogle Colab環境で提供する。
Colabのページ(ソースコードと説明): https://colab.research.google.com/drive/1fNfAdCRxnxxcxj9mH7lFVsP-uz4DAWoV?usp=sharing
【目次】
プログラム利用ガイド
1. このプログラムの利用シーン
顔写真から3次元モデルを自動生成するツールである。人物の顔画像(正面、斜め、横顔を含む様々な角度)を入力すると、その顔の立体形状をコンピュータ上で再現できる。生成されたモデルは、3Dプリンタでの出力、アニメーション制作、仮想現実コンテンツ、顔認識研究などで活用できる。
2. 主な機能
- 顔の自動検出: FaceBoxes検出器により、画像内の顔を自動的に検出する。複数の顔が写っている場合は、それぞれについて処理を行う。
- 3次元形状の推定: 検出された顔の立体的な形状(鼻の高さ、頬の丸み、顎の輪郭など)を計算する。
- テクスチャマッピング: 元の写真から顔の色や質感を抽出し、3Dモデルの表面に貼り付ける。
- 複数形式での出力: PLY形式(形状のみ)とOBJ形式(形状+テクスチャ)の両方で3Dモデルを保存できる。OBJ形式では、マテリアル定義ファイル(MTL)とテクスチャ画像(JPG)が同時に生成される。
- 処理結果の可視化: 元画像、スパースランドマーク(68点)、デンスランドマーク(サンプリング表示)の3段階を縦に並べて表示し、処理の精度を確認できる。
3. 基本的な使い方
-
実行環境の準備:
Google Colabのノートブックを開く
Colabのページ(ソースコードと説明): https://colab.research.google.com/drive/1fNfAdCRxnxxcxj9mH7lFVsP-uz4DAWoV?usp=sharing -
コードセルの実行:
コードセルを実行すると、リポジトリのクローン、依存パッケージのインストール、numpy互換性修正、Cythonモジュールのビルド、モデルの初期化が自動的に行われる。 -
画像の選択:
ビルド完了後、画像選択メニューが表示される。- 0: 画像ファイルアップロード(独自の画像を使用)
- 1: サンプル画像(デフォルトのテスト画像)
-
処理の完了を待つ:
コンソールに進行状況が表示される。「Detecting faces with FaceBoxes...」のメッセージから、顔検出と3DMMパラメータ回帰、頂点再構成が順次実行される。 -
結果の確認:
処理が完了すると、以下の3枚の画像が縦に並んで表示される。- Original Image (FaceBoxes Detector): 元画像
- Sparse Landmarks (68 points): スパースランドマーク(68点)
- Dense Landmarks (sampled): デンスランドマーク(サンプリング表示)
-
ファイルのダウンロード:
生成された3Dモデルファイルは、Google Colabの左側のファイルパネルから「output_3d_models」フォルダを開いてダウンロードできる。各顔について以下のファイルが生成される。face_N.obj: 3Dモデルのジオメトリface_N.mtl: テクスチャ参照を含むマテリアル定義face_N.jpg: 元の顔画像からUVマッピングされたテクスチャface_N.ply: 形状のみのPLY形式ファイル
4. 便利な機能
- 独自の画像を使用: プログラム実行時のメニューで「0」を選択し、ローカルの画像ファイルをアップロードできる。サンプル画像を使用する場合は「1」を選択する。
- 複数顔の同時処理: 画像内に複数の人物が写っている場合、各顔について個別の3Dモデルが生成される。
- ランドマーク密度の調整: 「dense_flag」パラメータを変更することで、再構成する頂点数を調整できる。Trueでデンス(数千点の詳細な顔表面点)、Falseでスパース(主要なランドマーク点のみ)が生成される。
5. 3Dモデリングソフトウェアでの利用
ダウンロードしたOBJファイルは、Blenderなどの3Dモデリングソフトウェアで開いて編集できる。OBJファイルをインポートすると、MTLファイルで定義されたマテリアルとテクスチャが自動的に適用される。
Blenderでのインポートと表示方法:
- Blenderを起動する
- メニューバーから「ファイル」→「インポート/エクスポート」→「Wavefront (.obj)」を選択
- ダウンロードした
face_N.objファイルを選択してインポート - オブジェクトが原点から離れた位置にある場合は、以下の操作でオブジェクトにフォーカスする
- アウトライナー(画面右上のパネル)でインポートしたオブジェクトを選択
- メニューバーから「ビュー」→「選択をフレームイン」を実行
- または、テンキーの「.」キーを押す
プログラムコードの説明
1. 概要
このプログラムは、単一の顔画像から3次元顔モデルを生成し、テクスチャ付きの3Dモデルファイル(OBJ形式、PLY形式)として出力する。3DDFA_V2(3D Dense Face Alignment Version 2)フレームワークとFaceBoxes顔検出器を統合している。Cythonモジュールのビルド時に発生するnumpy互換性問題を事前に修正することで、Google Colab環境での安定動作を実現する。
2. 主要技術
3DDFA_V2(3D Dense Face Alignment Version 2)
Guo et al.が2020年に開発した3次元顔位置合わせフレームワークである[1]。3DMM(3D Morphable Model)パラメータを軽量なバックボーンネットワークを用いて回帰することで、速度、精度、安定性のバランスを実現する。メタジョイント最適化戦略により、少数の3DMMパラメータを動的に回帰し、単一のCPUコアで50fps以上の処理速度を達成する。
FaceBoxes
Zhang et al.が2017年に提案したCPUリアルタイム顔検出器である[2]。Rapidly Digested Convolutional Layers(RDCL)とMultiple Scale Convolutional Layers(MSCL)を組み合わせた軽量ネットワーク構造を持つ。アンカー密度化戦略により、小さな顔の検出率を向上させ、VGA解像度画像に対してCPUで20fps、GPUで125fpsの処理速度を実現する。このプログラムでは、FaceBoxes_ONNXとして実装された公式検出器を使用する。
3. 技術的特徴
• numpy互換性の事前修正
Cythonモジュールのビルド前に、cpu_nms.pyx、cpu_soft_nms.pyx、bfm.pyの各ファイル内の非推奨型(np.int、np.long)を互換型(np.intp、np.int_)に正規表現で置換する。この処理により、numpy 1.20以降の環境でのビルドエラーを回避する。
• クリーンビルドの実施
既存の3DDFA_V2ディレクトリが存在する場合は削除し、GitHubリポジトリから最新のコードをクローンする。これにより、以前のビルドの影響を受けることなく、安定した環境を構築する。
• 3つのCythonモジュールの自動ビルド
以下のモジュールを順次ビルドする。
- FaceBoxes NMS module:
FaceBoxes/utils/build.py - Sim3DR module:
Sim3DR/setup.py - render module:
utils/asset/render.c(gccコンパイラを使用)
各ビルド処理でエラーハンドリングを行い、警告メッセージを表示する。
• 3DMMパラメータ回帰
検出された顔領域に対し、3DDFA_V2は3DMM(3D Morphable Model)[3]のパラメータセットを畳み込みニューラルネットワークにより推定する。3DMMは、Blanz and Vetterが1999年に提案した統計的顔モデルである。複数の3次元顔スキャンデータに主成分分析を適用し、線形モデル空間を構築する。このプログラムは形状と表情のパラメータを推定し、顔の3次元構造を復元する。
• 密な頂点再構成
推定された3DMMパラメータから、顔表面の3次元座標を持つ頂点群を生成する。dense_flagパラメータにより、スパース(68点の主要ランドマーク点)またはデンス(数千点の頂点)のいずれかの密度で再構成を実行できる。
• UVマッピングによるテクスチャ生成
元画像から顔領域のテクスチャを抽出し、3Dメッシュの表面にマッピングする。OBJファイルのエクスポート時に、以下の処理を実行する。
ser_to_obj関数でOBJファイルを生成- 元画像をJPG形式でテクスチャファイルとして保存
- MTLファイルを手動で生成し、テクスチャファイルへの参照(
map_Kd)を記述 - OBJファイルに
mtllib、usemtl行を追加してMTLファイルを参照
この処理により、3Dビューアでの現実的なレンダリングが可能になる。
• 可視化の実装
matplotlib.pyplotを使用し、3つのサブプロットを縦に配置する。
- 上段: Original Image (FaceBoxes Detector)
- 中段: Sparse Landmarks (68 points) - 緑色の円で表示
- 下段: Dense Landmarks (sampled) - 青色の円で5点おきにサンプリング表示
4. 実装の特色
このプログラムは、Google Colab環境での実行を想定した完全自動化パイプラインを提供する。主な特色は以下の通りである。
- リポジトリのクローン、依存パッケージのインストール、互換性修正、Cythonモジュールのビルド、モデルの初期化までを単一セル内で完結させる
- 3つのCythonモジュール(FaceBoxes NMS、Sim3DR、render)を自動ビルドし、エラーハンドリングを行う
- 画像選択メニューにより、サンプル画像とユーザーアップロード画像の切り替えが可能
- サンプル画像はURLから直接読み込み、動作確認を簡便化する
- 検出された各顔に対して個別の3Dモデルファイルセット(OBJ、MTL、JPGテクスチャ、PLY)を生成する
- 元画像、スパースランドマーク、デンスランドマークを3段階で縦に並べて可視化し、処理結果を検証する
- 生成されたファイルのリストとサイズを表示し、ダウンロード方法を案内する
5. 参考文献
[1] Guo, J., Zhu, X., Yang, Y., Yang, F., Lei, Z., & Li, S. Z. (2020). Towards Fast, Accurate and Stable 3D Dense Face Alignment. In Proceedings of the European Conference on Computer Vision (ECCV). https://arxiv.org/abs/2009.09960
[2] Zhang, S., Zhu, X., Lei, Z., Shi, H., Wang, X., & Li, S. Z. (2017). FaceBoxes: A CPU Real-time Face Detector with High Accuracy. In 2017 IEEE International Joint Conference on Biometrics (IJCB), 1-9. https://arxiv.org/abs/1708.05234
[3] Blanz, V., & Vetter, T. (1999). A Morphable Model For The Synthesis Of 3D Faces. In Proceedings of the 26th Annual Conference on Computer Graphics and Interactive Techniques (SIGGRAPH '99), 187-194. https://doi.org/10.1145/311535.311556
実験・研究スキルの基礎:Google Colabで学ぶ3D顔モデル生成実験
1. 実験・研究のスキル構成要素
実験や研究を行うには、以下の5つの構成要素を理解する必要がある。
1.1 実験用データ
このプログラムでは顔画像ファイルが実験用データである。
1.2 実験計画
何を明らかにするために実験を行うのかを定める。
計画例:
- 異なる角度の顔画像(正面、斜め、横顔)で3D再構成の精度を比較する
- 複数人が写った画像での顔検出精度と3Dモデル生成の成功率を確認する
- 画像の解像度が3Dモデルの品質に与える影響を調べる
- 照明条件(明るい、暗い、逆光)が3D再構成に与える影響を検証する
- dense_flagパラメータの違いによる頂点数と処理時間の関係を明らかにする
1.3 プログラム
実験を実施するためのツールである。このプログラムは3DDFA_V2フレームワークとFaceBoxes顔検出器を使用している。
- プログラムの機能を理解して活用することが基本である
- 基本となるプログラムを出発点として、将来、様々な機能を自分で追加することができる
1.4 プログラムの機能
このプログラムは顔画像から3次元モデルを生成する。
入力パラメータ:
- 画像URL(img_url変数):処理対象の顔画像の指定
- dense_flag:再構成する頂点の密度(True=デンス、False=スパース)
処理プロセス:
- FaceBoxesによる顔検出:画像内の顔領域を検出
- 3DMMパラメータ推定:検出された顔の形状と表情パラメータを推定
- 3D頂点再構成:推定されたパラメータから3次元頂点座標を生成
- テクスチャマッピング:元画像から顔のテクスチャを抽出してマッピング
出力情報:
- 検出された顔の数
- 3段階の可視化画像(元画像、スパースランドマーク、デンスランドマーク)
- 3Dモデルファイル(PLY形式、OBJ+MTL+テクスチャ画像)
- 各ファイルのサイズ情報
1.5 検証(結果の確認と考察)
プログラムの実行結果を観察し、パラメータや入力画像の影響を考察する。
基本認識:
- 入力画像や処理パラメータを変えると結果が変わる。その変化を観察することが実験である
- 「良い結果」「悪い結果」は目的によって異なる
観察のポイント:
- 顔検出は成功したか(複数顔がある場合はすべて検出されたか)
- スパースランドマークは顔の特徴点を正確に捉えているか
- デンスランドマークは顔表面を自然に表現しているか
- 生成された3Dモデルは元の顔の形状を再現しているか
- テクスチャは適切にマッピングされているか
- dense_flagの違いでファイルサイズや詳細度はどう変化するか
2. 間違いの原因と対処方法
2.1 プログラムのミス(人為的エラー)
Cythonモジュールのビルドエラーが発生する
- 原因:numpy互換性問題の修正が正しく適用されていない、またはコンパイラが利用できない
- 対処方法:プログラムの冒頭にある互換性修正部分が実行されているか確認する。エラーメッセージを確認し、提供されたコードと比較する
モデルのダウンロードやビルドに時間がかかる
- 原因:初回実行時にリポジトリのクローン、依存パッケージのインストール、Cythonモジュールのビルドを行っている
- 対処方法:これは正常な動作である。
2.2 期待と異なる結果が出る場合
顔が検出されない
- 原因:画像に顔が写っていない、顔が小さすぎる、または極端な角度や遮蔽がある
- 対処方法:顔が明確に写っている画像を使用する。複数人の画像で試し、FaceBoxesの検出能力を確認する
ランドマークの位置がずれている
- 原因:極端な表情、顔の一部が隠れている、または画質が低い
- 対処方法:これは3D顔位置合わせの限界を理解する機会である。どのような条件で精度が低下するか記録する
生成された3Dモデルが元の顔と異なる
- 原因:3DMMは統計的平均顔モデルを基にしており、個人の特徴を完全には再現できない
- 対処方法:これは3DMM手法の特性である。どの程度の個人差が再現されるか観察し、記録する
テクスチャが歪んでいる
- 原因:極端な角度の画像、または照明条件の影響
- 対処方法:正面に近い角度の画像で実験し、角度による影響を比較する
処理時間が長い
- 原因:画像解像度が高い、または複数の顔が検出されている
- 対処方法:これは正常な動作である。解像度と処理時間の関係を実験データとして記録する
3. 実験レポートのサンプル
顔の角度が3D再構成精度に与える影響
実験目的:
正面、斜め、横顔の3種類の角度で撮影された同一人物の画像を用いて、顔の角度が3D再構成の精度に与える影響を明らかにする。
実験計画:
dense_flagをTrueに固定し、同一人物の異なる角度の画像で3Dモデルを生成する。視覚的評価により精度を比較する。
実験方法:
プログラムを実行し、img_url変数を変更して以下の基準で評価する:
- 顔検出成功:FaceBoxesが顔を検出できたか
- ランドマーク精度:スパースランドマークが顔の特徴点(目、鼻、口)を正確に捉えているか
- 3Dモデル品質:生成されたOBJファイルを3Dソフトウェアで確認し、元の顔形状の再現度を評価
- テクスチャ品質:マッピングされたテクスチャの自然さを評価
実験結果:
| 顔の角度 | 顔検出 | ランドマーク精度 | 3Dモデル品質 | テクスチャ品質 |
|---|---|---|---|---|
| 正面(0度) | 成功(架空の値) | 高精度(架空の値) | 良好(架空の値) | 良好(架空の値) |
| 斜め(45度) | 成功(架空の値) | やや低下(架空の値) | やや低下(架空の値) | やや歪み(架空の値) |
| 横顔(90度) | 成功(架空の値) | 大幅低下(架空の値) | 不良(架空の値) | 大幅な歪み(架空の値) |
考察:
- 正面画像では、スパースランドマークが目、鼻、口の位置を正確に捉えており、生成された3Dモデルも元の顔形状を良好に再現していた(架空の結果)
- 斜めxxxx度の画像では、顔検出は成功したものの、顔の片側の情報が少ないため、3Dモデルの精度がやや低下した。特に見えない側の頬や耳の形状に不正確さが見られた(架空の結果)
- 横顔(xxxx度)の画像では、顔検出は成功したが、正面の特徴点(両目の位置など)が得られないため、3D再構成の精度が大幅に低下した。生成されたモデルは統計的平均顔に近い形状となった(架空の結果)
- テクスチャマッピングについては、正面画像が最も自然であり、角度が大きくなるほど歪みが増加した。これは3D表面への2Dテクスチャ投影の限界を示している(架空の結果)
結論:
本実験により、顔の角度が3D再構成精度に大きく影響することが確認された(架空の結果)。正面に近い画像ほど精度が高く、角度が大きくなるほど精度が低下する傾向が明確に現れた(架空の結果)。実用的な3D顔モデル生成には、正面から±xxxx度以内の画像を使用することが望ましい(架空の結果)。また、3DDFA_V2は単一画像からの再構成を行うため、見えない部分は統計的平均顔で補完されることが確認できた(架空の結果)。より正確な3Dモデルを得るには、複数角度からの画像を統合する手法が必要であることが示唆された(架空の結果)。